今日もパンが食べたい。
前日の夜から、ソワソワと娘が近寄ってくる。
「ねえ、ママ、明日休みだよね?」
はい、明日は休みです。
「朝ごはん、パン食べたいなあ。おいしいやつ」
私は仕事が朝早いため、娘と朝食をとることはほとんどない。だから休みの前になると、娘がこうやって近寄ってくる。
サンドイッチ?
トースト?
フレンチトーストみたいなやつ?
「えー、迷うなあ。おすすめは?」
そうだなあ。ピザトーストとかは?
「食べたーい!」
どこにでもある日常。
娘とのちょっとしたひととき。
そこに欲望としてあるのが、パンだ。
甘いパンも好き。
バターをのせて、お砂糖をかけて食べるのもいい。そこにはちみつを、たらーっとかけるのもいい。
あんこも好き。
時には季節のジャムも。
もちろん、お食事系も好きだ。
明太子があれば明太子トースト。
ハムやキュウリをはさんでサンドイッチ。
納豆トーストも捨てがたい。
家で食べるパンはバラエティに富み、妄想と欲望が世界を広げる。
「チャイとコーヒー、どっちする?」
娘は基本、チャイを選ぶ。
スパイスティーに豆乳を入れる。本場と違うのは、お砂糖を入れないこと。
「できたよー」
声をかけると、パタパタと降りてくる。
娘の笑顔が何より楽しくて、「おいしい!」が聞けたら、それはとてもうれしい。
ちなみに、ここまで出てきたパンは、全部お米のパンだ。
お米からできた、もっちもちのパン。
軽く焼き上げた、カリッと軽い食パン。
ちょっとむっちりしたベーグル。
翌日なら温めて、そして、うちではなんかはさむ。

夫がいない日は、娘と「カフェごっこ」をすることもある。
窓際にテーブルを出して、カフェ飯みたいなワンプレートを作る。
ホットサンド。
中身はチーズとベーコン。
水菜のサラダに、りんごを添えて。
ハンドドリップでコーヒーを淹れると、香ばしいコーヒーとパンの焼ける匂いが混ざって、ますますお腹がすいてくる。
窓から見える借景は、まるで森のよう。
時々、何の鳴き声かわからない声も聞こえてくる。
そんな中で、取り留めのない話が止まらない。
娘はアレルギーがあり、小麦のパンを食べたことがない。
だから、うちにあるのは米のパン。
冷蔵庫にしまえば固くなるし、翌日のパンをお昼ごはんに持っていって、
「固かった〜」
なんて言われることもある。
まあ、固くなるものは固くなる。
だから電子レンジで温めたり、蒸したり、焼いたり。
どうしたらまたおいしく食べられるか、いろいろ試す。
ある日、夫は固くなったパンでお好み焼きを作っていた。
これが、かなり美味。
こうなると、工夫するのも楽しくなってくる。
私はパン屋だ。
京都の南部、京田辺市というところで、お米から作るパン屋をしている。
「どうしてお米のパンを作り始めたんですか?」
と聞かれれば、きっかけはやっぱり娘のアレルギーだった。
でも、作れば作るほど、食べれば食べるほど、お米のパンは奥深くて面白い。
そのうち、お米から酵母まで起こすようになった。
「こんなパンが食べたい」
そんな声を聞いているうちに、パンの種類もどんどん増えた。
行くたびに違うパンがある。
というか、「もう一度食べたい」と思った頃には、すでに販売終了していることもざらにある。
また次のパンを作ってしまうから。
だって今日も、パンが食べたいからね。